健康法師からの便り

二・二六事件に遺された現代へのメッセージ 「はじめに」

投稿日:2019年2月22日 更新日:

不思議な縁

人の縁とは不思議なもので、私が慶応大学経済学部に入学して最初に親友になったのが山田哲司君であった。何故か理由はわからぬが引かれるものがあった。やがて判明したことは、彼が小学校4年のときに「史上最年少で(無線)ハムの免許を取得した天才少年」として、朝日新聞に紹介されたことである。その記事を私がはっきり覚えていた。私はその記事に、同い年の少年として、強い嫉妬を覚えたのだ。当時ハム無線は、海外の人と対話ができる夢のマシンであった。二人で旅行したり、学生時代の思い出も深いが、彼は授業にあまり出席せず、高給の翻訳のアルバイトをして稼ぎまくりアメリカ留学費用を貯めていた。また留学後就職せずIBMのワードプロセッサー(当時一台500万円)を複数台使用した英文出版の会社を立ち上げ、TOEFL(留学テスト)用の教材等を作成し大儲けをする等、先見性のある人物であった。私もサラリーマンが嫌でアメリカの大学院留学を思い立ったとき、彼は全面的に支援してくれた。彼の作った教材、彼が主催したセミナーでTOEFLを勉強し、おかげでペンシルバニア大学の経営大学院・ワートンスクールで学ぶことができた。同窓としてはアメリカ大統領トランプがいる。私より少し先に入学したようだ。留学後に一念発起し脱サラして教育関連の会社を立ち上げたときも彼はまた全面的に支援をしてくれて、彼の事務所の一角で新会社は産声を上げた。いつも世話になるばかりであった。

会社も順調に発展して、それぞれお互いの道を歩んだが、ある日TIME(英文雑誌)に彼の写真付き記事あり、IP-Phone(インターネットを利用した電話)の先駆者である「Japanese business man」として紹介されていた。日本のIT時代の始まりだ。

ある年、彼からの年賀状に「安藤君のご祖先と僕の祖先は姉川の戦いでご一緒しました」と書いてあった。「姉川の戦い」とは浅井・朝倉勢と織田信長勢との壮絶な闘いであるが、西美濃三人衆(稲葉、氏家、安藤)も織田勢として参戦した。私ども安藤家が岐阜揖斐の出身であることから、安藤守就に縁があると思ったのであろう。聞くところによる山田哲司君の祖先は織田の侍大将で、お市の方とともに小谷城に随伴し、落城のときはお市の方や三姉妹を救出したという。

最近明智光秀が再評価されているが明智氏は土岐一族である。先日明智光秀特番のテレビを見ていたら、土岐氏本家の末裔として山田哲司君が出演していた。顔にはテレビ人生相談よろしく顔にぼかしが入っていたが、声と髪型がどう見ても山田哲司君だった。番組では家伝の鎧兜などを紹介していたと思う。そういえば、彼の家に遊びに行ったとき、床の間に威厳のある鎧兜が鎮座していて、私の幼い子どもが怖がったことがあった。

そんな彼から、岐阜の知り合いの井澤康樹という人が「戦前戦後史人権フォーラム」を主宰予定で、その対象の一人が二・二六事件の青年将校安藤輝三大尉であるとの知らせがあった。安藤輝三は私の叔父に当たり、二・二六事件は少し気掛かりであったので、フォーラムに参加することにした。一回目のフォーラムは平成29年の2月26日に開催された。第三回目の「戦前戦後史人権フォーラムは平成31年2月23日、先祖縁の岐阜県揖斐で行うことになり、私も60分の時間を頂戴することとなった。井澤康樹氏は『美濃源氏フォーラム』(土岐氏)を主宰するなど多方面で活躍されている方で、お目に掛かって以来、こちらにも世話になりっぱなしである。

さて、二・二六事件のことを調べようとして最近分かったことだが、実は山田君の叔父さんが弘前連隊勤務のころ安藤輝三叔父と親交があり、二・二六事件のことをずっと調べていたという。山田君が遺品を預かっていて、事件関連資料を寄贈してくれると申し出てくれた。貴重な資料もあり、これからの研究に役に立つ。さらに驚いたことだが、山田君のお兄さんである山田恵久氏(日本でただ一人ビンラディンと会った人物)が主宰している『国民新聞』に長年原稿を寄せていた昭和史研究家山口富永氏が、国民新聞社から『二・二六事件の偽史を撃つ』、『近衛上奏文と皇道派』という本を上梓していたことだ。多くの二・二六事件に関する書物が、二・二六事件の背後にある戦争推進派の謀略について触れていないのに反し、山口氏は、二・二六事件の背景や日本を大戦に向かわせた勢力の謀略と二・二六事件等について真面目に研究し、歴史の真実を暴き出したといえる。ここに山口氏の業績に敬意を表したい。

私は二・二六事件の主謀者の一人、安藤輝三大尉の兄安藤徳一の長子であるが、安藤輝三の子息の日出雄氏は80歳を超え健康問題もあるので、多少若い私がフォーラムで60分の講演を引き受けさせていただくことになった。何分不勉強であるため、皆さまからのお叱りを受けることと思うが、昭和初期と今後の日本が抱えるものに共通するものがあると思い、二・二六事件に遺された現代へのメッセージを探ってみた。

安藤輝三大尉
甥 安藤 徳彰


 

二・二六事件に遺された現代へのメッセージ

~ 目次 ~

「はじめに」

第1章「青年将校 安藤輝三大尉と岐阜」

第2章「歪められる近現代史」

第3章「昭和前期における国民の窮状と権力者の腐敗」

第4章「日本社会改革の5つの選択」

第5章「統制派の陰謀と戦線拡大・敗戦」

第6章「明治日本で成立した国家体制とその欠陥」

第7章「秩父宮と安藤輝三大尉」

第8章「現代へのメッセージ」

「おわりに」

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