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~ 自己・自国利益第一主義は世界にカオスをもたらす ~
世界はめまぐるしく変遷する。世界は進化しているはずだが、時には逆行もする。トランプの再選は進化の時計が逆回りした感じだ。米国は国際秩序の盟主の地位を自ら降りるようだ。世界はさらに多極化する。
私がペンシルベニア大学経営大学院ウォートン・スクールに留学したのが1976年、米国独立200年祭の最中で、当時の米国の大統領は「基本的人権」を大切にした民主党のジミーカーターで、国内には「建国の精神」、「自由と民主主義」を謳歌する気風に恵まれていた。当時米国はまだ、自由と民主主義の理念の国であった。私はこのころの米国が好きである。
All men are created equal. (すべての人は平等に創られている)。これは独立宣言の中の一文で、福澤諭吉も訪米したときにワシントン大統領府の独立宣言にこの一文を見つけて感激した。
それから44年後の今、トランプが米国の大統領に再選された。米国第一主義を掲げ、世界にchaos(カオス 混沌)をもたらそうとしている。その独善的な手法はロシアなどの独裁国家にも通じ、19世紀のへの回帰でもある。
このドナルド・トランプは私より2年程前にウォートン・スクールに入学していた。日本は国勢が上り坂の時期で、1979年にはエズラ・ヴォーゲルが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を上梓した。
卒論担当のパールミュッター教授が授業の中で「They are as clever as we are.」(日本人は私達と同様に賢い)と言われたとき、クラスメイトは私を見ながら拍手を送った。私は日本人として誇りに思った。卒論は、DS(distinguished 極めて優れている)であった。
日本は1990年前後に日本は国勢のピークを迎え、1994年には世界のGDPの17.9%を占めていた。なぜか、その後長期の停滞が続き、先進国のなかでも最劣等生に陥ってしまった。一体何が原因であるのか。
日本停滞の原因
昭和初期の「愚かなる開戦」に突入するときの状況と1990年後半からの日本の凋落は、主原因は共通している。各プレーヤーが自己利益第一主義(レントシーキング)に陥った世相が大きく関連している。「自分がよけりゃ、今がよけりゃ、自国がよけりゃ」、という世相だ。明治のころまでは各自が公益、つまり日本の発展のために尽力したが、昭和初期の日本では、政治家の汚職は蔓延し、軍部も財閥と癒着し、満州における利権を捨てることもできず、エリートにおいては自国の利益のために他国を侵略しても良いという19世紀の風潮に押されて、中国への侵略を進め、その結果予想外の中国の抵抗に出会い、泥沼に入り込み、引けなくなって、日米開戦に至った。欧米などによる中国支援を軽く予測して陸大卒の軍事エリートや高級官僚、宮中は誤った判断をしたのだ。(このあたりは今のロシアとウクライナの構図は似てはいないだろうか)。
戦線拡大に反対したのは皇道派に属する将軍達(真崎大将など)や国内改革を望む青年将校(安藤輝三大尉など)で、ジャーナリストとしては石橋湛山。また皇族としては近衛文麿、秩父宮殿下が戦争不拡大および講和に尽力したが。しかしながら、これらの動きはことごとく軍部や宮中によって妨害された。
1990年以降の日本の凋落も、戦前と同様に自己利益第一主義(レントシーキング)が横行したためだ。
敗戦後は皆復興に一心不乱で高度成長を遂げた。しかし、高度成長の後、慢心した政治家は自己の利益、当選のためには何でもするようになり、大企業から献金を受け、その見返りに大企業のための政治をするまた、日本人を贖罪の対象とし、多く金銭を献金させ日本人の家庭を破壊させた反日の統一教会との濃密な関係を結んだり、ポピュリズム的な政策のために税金を湯水にごとく垂れ流した結果として、30年間の無成長の上に巨額の国家債務は1200兆円まで積み上がり世界最悪だ。また教育や人材育成のための先行投資をしなかったので、未来につながる人材や技術は育っていない。日本は2等国に成り下がってしまった。いやはや、日本人は辛抱強い国民だ。日本は一体何のために税金を使ってきただろうか。
アメリカの凋落
MAGAとは make America great again. アメリカを再び偉大にするということだか、どうも、もはや偉大ではないということなのか。 日本が1990年代から凋落したのに比べ、米国はマクロでは現状維持だ。それに今の景気も悪くない。それなのに何故民主党の人気がなく、ドナルド・トランプが再選したのか。
アメリカ大陸は広大であり、地域性が強い。1990年大以降のグローバリゼーションとIT革命、金融革命は東西の沿海部が中心地となり、重工業と製造業の中心部であえるボストンから始まりウイスコンシン一帯は、競争力が落ちたラストベルトとなってしまった。そこに分断の基盤がある。また、アメリカという国が白人以外の人種が増え、東洋人やインド人なども優秀で、エリートでない白人に屈折した気持ちが鬱積するようになった。このような人々がMAGAの基盤だ。
米国にはまず南北戦争があり、第一次世界大戦に理想主義者ウイルソン大統領が提案した国際連盟に共和党が反対し米国は加盟しなかった。アメリカは二つに割れやすい国なのだ。
欧米間では互いに干渉しない方針をモンロー主義という。日本も戦前アジアにおけるモンロー主義を唱えて、アジアにおいては欧米の干渉を許さないとした。
健全な国際秩序は国際協調でしか生み出されない。
結局、米国のこのような主義がヒットラーの侵略の誘い水となったともいわれている。国際協調がない限り、世界の安寧・平和は訪れない。違反者に対しては協力してペナルティーを与えなければならない。サルの世界でも、ルールーを破る者には集団でペナルティーを与える。それで、サルなりの社会の秩序が維持されている。
経済学に「囚人のジレンマ」というコンセプトがある。囚人はそれぞれ役割が与えられているが、一人がずるしてさぼると、結局全体が上手く機能しなくなり、最後にさぼった囚人にもマイナスが及ぶということだ。だから、ジレンマなのだ。今、米国がさぼろうとしているのではないか。それは、最後には米国にもマイナスをもたらすのではないか。
ロシアが2014年にウクライナのクリミア半島を占領したときに、米国オバマ大統領は安部総理に電話して「ロシア制裁に参加するよう」依頼したが、安倍首相はこれを断った。このような国際連携の不十分さが2022年のロシアのウクライナ侵略につながった。安倍首相は27回プーチンと面会し、プーチンからウインクまでされたが、何も得るものはなかった。完全にカモにされた。安倍首相の親戚の松岡洋右外相は、日ソ不可侵所条約を結んだときに、スターリンは喜び、駅まで送りに来て強く抱擁したが、結局終戦時に条約は一方的に破棄され、ソ連は無防備な日本に襲いかかった。国益とはそのようなもので、日本人の感覚は甘すぎるのだ。
日本のあるべき立ち位置
米国は大切な同盟国だ。私も米国が大好きだ。しかし、米国に追従しているだけでは、米国の先兵となり、大きな戦いに巻き込まれる。
世界は多極化する。その中で存在感を持つためには、他国も共感できる「倫理性」を日本は持たなくてはならない。日本には共生や慈悲を大切にする仏教の伝統がある。聖徳太子の十七条の憲法には「和をもって貴しとなす」と定められています。また、平和憲法もある。古来より大和と称して、和を尊ぶ精神がある。「出雲の国譲り」、「江戸城の無血開城」なども事例もある、災害のとき、皆で協力する「絆」の精神、や「結い」の風習もある。世の中で争うが絶えないのは、「共生」の精神が欠けているのだ。
日本は、「共生」、「共和」、「共存」、「共恵」、「共栄」を世界で「共有」できるように訴えるべきで、沖縄その発信地として、国際機関を設置すべきだ。また、中国と米国の間に立って、両勢力が極端な方向に向かわないように努力すべきだ。
2025年1月25日
安藤 徳彰